今日味新深(No.8:2010/4/01)
先月、所用で北京に1週間ほど滞在しました。電池,環境,エネルギー,自動車材料と多岐にわたる分野の大学などの研究開発関係者にコンタクトしましたが,そこで感じたことは,猛烈な速度での中国の変化と日本の孤立感です。
たとえばリチウムイオン電池関係では,少し前までは日本の独壇場でしたが,現在はBYD社など中国勢が上位に名を連ねるようになっています。安価であるということだけでなく,研究開発も非常に活発に実施されています。韓国もまた,電池に力を入れています。北京滞在中に中国の電池協会の方と話をする機会がありましたが,中国・韓国の2国間では,情報交換のワークショップのようなものを毎年開催しているそうです。
数年前に日本にも声をかけたそうですが,日本サイドは情報の流出を恐れて参加してくれなかったとのことです。数年前の状況を見れば,日本サイドの判断は非常に良く分かりますし,それが正解であったとも思います。
しかし,それ以降の状況の変化は激しく,近年の状況は単純に技術情報流出のデメリットだけでは見てはいけないものに変わってきているようにも思いますが,一度作られた枠組みはなかなか変えることができません。結果として,中国から日本を眺めてみると日本が少し蚊帳の外にいる印象があります。
環境分野では会員企業向けに各種の情報サービスを実施して環境ビジネス関係の協会の方に会いました。そこでは,欧米企業の会員は結構いるようですが,日本企業の会員はゼロとのことです。中国での環境関係ビジネスの難しさは,以前から指摘されているとおりです。
一方、中国では都市化の進行とともに北京市をはじめとして新しいごみ焼却場の計画が多数あるのですが,ダイオキシンを初めとする古いごみ焼却場の悪いイメージが強くあり,住民の反対からその建設がなかなか進まないそうです。
そこで,ごく最近,北京市政府はごみ焼却場の建設を反対する住民代表とメディアの代表を,日本のごみ焼却場設備の見学に連れ出して,悪いイメージを払拭しようとしているとのことです。中国でのビジネス展開に関して,これまでとは大きな異なる変化が生じているのですが,どうも日本企業の情報キャッチが遅れているのではないかと懸念します。
清華大学への訪問の中でもエネルギーや自動車関連で,中国の技術が急速に高度化すると共に,社会が新しい技術を受け入れやすいように,公共機関への補助導入などの政策誘導が行われています。もちろん,中国市場では低コスト化のプレッシャーは依然として厳しく,ビジネスは単純ではありませんが,昔の印象を頭の中で延長した以上に,中国では高性能な技術の普及に向けた研究開発が進んでいますことが感じられました。
今回の訪問では,中国の動向を知るには,やはり行ってみる事が重要であるとの印象を改めて強くしました。外側から情報を集めて解析することも必要なのですが,情報を集めている間に状況が変化してしまう位に変化のスピードが速い部分を感じます。そのためにはキーパーソンを見つけてスピード感を持ってコンタクトすることが非常に重要だと思います。
当社はネットワークの範囲が限られてはおりますが、中国トップレベルの学術関係者とのネットワーク構築に意識的に取り組んできました。是非,このネットワークを活用いただければと思います。