世の中では、毎日のように“〇〇詐欺”のニュースが流れています。
たとえば、税務署の職員を名乗り、「医療費還付金の手続きをすれば、お金を受け取れます」
という電話をかけ、手続きの期限が迫っていると焦らせて、すぐに携帯電話を持って近くの
ATMに行くように指示します。
冷静になれば、噓だとわかるのですが、税務署という“権威”をちらつかせて、穏やかな口調で
話しかけられ、そこに、お金がもらえるという欲が重なって、つい信じてしまいます。
こうした判断においては、データや情報そのもの(コンテンツcontent)よりも、
関係性や心情・心理などの“文脈”(コンテクストcontext)の影響が大きくなります。
米国の文化人類学者エドワード・ホールは、著書「beyond culture」(1976年刊)において、
米国は典型的な低コンテクスト文化(Low-context culture)で、反対に、日本は高コンテクスト
文化(High-context culture)だと述べています。
高コンテクスト文化においては、相手との関係性や背景にある状況などを考慮して判断しがち
になります。
「あの人が言うなら、そうかな」、「みんなもやっているので、大丈夫だよ」、
「困っているので、力になりたい」 といったものです。
このような状態に陥らないためには、“論理的に疑う”ことが重要です。
そのための思考法が、クリティカルシンキングです。
論理性を確認するには、次の3点がポイントです。
①データは事実か
②データ(ことば)は一義的で、誤解なく解釈できるか
③データと主張(結論)をつなぐすじみちに矛盾はないか
先ほどの例では、
①ほんとうに税務署員なのか/自分に未受領の還付金があるのか
②相手の言う“還付金”とはどういうお金なのか/ “手続き”とはどういうものか
③なぜ還付金の受け取りをATMで行うのか/還付の申請は任意なのになぜ指示があるのか
といった疑問を持つことです。
ビジネスにおいても、相手の言うことを鵜吞みにせず、論理的に疑うことを心がけてください。
そのためには、“コンテクスト”としての権威、肩書、人柄、感情や心情などによるバイアスを外し、
“コンテンツ” の論理性を確認してください。