今日味新深(No.69:2013/5/15)
東日本大震災以降、放射線汚染の土壌に関心事が集まりがちですが、それ以前から産業活動や地質起源に由来したVOC(揮発性有機化合物)や重金属などの有害物質による土壌・地下水汚染が顕在化していました。
2002年には「土壌汚染対策法」が制定され、国民の安全と安心の確保を図るため、土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施することとなっています。
VOC汚染土壌/地下水の浄化方法としては、汚染された地下水を揚水し曝気処理によって水中に溶解したVOC を気化させ清浄になった水を再び戻す揚水曝気法や、土壌中に吸着もしくは滞留するVOC をガスとして吸引して浄化する土壌ガス吸引法等があります。
重金属汚染土壌の浄化方法には、汚染土壌に薬剤を混合することで重金属の溶出を防ぐ不溶化法や、汚染土壌を洗浄・分級して清浄土と汚染物質に分離する土壌洗浄処理法等があります。
土壌浄化ビジネス市場は、国内では2011年土壌汚染対策事業実績で約1,500億円1)、2020年に5,200億円程度との予測もあります2)。
また、近隣のアジアでも法制化の動きが進んできており、台湾では、2000年に「土壌及地下水汚染整治法」を制定し、中国でも2008年に「土壌汚染の予防・対策の仕事の強化に関する意見」が発表され、法制化が進むと考えられています。
さらに中国政府は、地下水汚染現状調査、浄化対策等に、2020年までに約350億元(約4,500億円)の政府支出を行うとしています3)。
人口増加に伴う飲料水の確保の面からも、土壌/地下水浄化はますます重要な分野になっていきます。特に開発途上国にとっては導入コストの低減が重要な課題になります。
普及を図るためには導入時のみならず運用期間も含めたビジネスモデルの構築を行って、導入障壁を低くする方策の検討が必要になるかもしれません。
弊社は中国の水質総量規制や地下水汚染に関する調査実績があります。アジア全体の市場は未知数の部分はあるものの、今後、新たなビジネスチャンスの可能性が大きいと考えられ、引き続きこれらの動向について把握してゆく予定です。
1) 社団法人土壌環境センター:平成24年10月4日「平成23年度の土壌汚染調査・対策事業受注実績」
2) 近畿経済産業局:平成20年3月「関西における新環境ビジネス進戦略」
3) 環境新聞:2012年11月7日・14日・21日 「アジア各国における環境法制の強化と企業の取り組み」