今日味新深(No.39:2011/11/11)
近年、シリコン結晶系太陽電池の分野で、SuntechやJA Solar等の中国メーカーが世界の太陽電池市場で重要な地位を占めてきております。
これまでは、中国で生産された太陽電池は主に欧州に輸出され、ドイツ、スペイン、イタリア等で大規模な太陽光発電所が建設されてきましたが、各国の太陽光発電による電力の買取価格が引き下げられたために導入量が減少し、太陽電池の供給過剰による価格下落が起こっています。
一方、日本においても8月末に再生可能エネルギー特別措置法が成立し、1年以内に欧州と同様の全量買取制度がスタートします。これまで日本の太陽電池市場は、補助金等の適用範囲が限られていたことから戸建住宅向けが中心であり、工場、ビル、太陽光発電所など大型設備への普及が遅れていましたが、同法が施行されれば、買取価格の保証と太陽電池の価格低下により、太陽光発電が事業として採算が合う状況になり、大型設備の市場が急速に立ち上がると予想されます。そのため、中国等の海外メーカーの安価なシリコン結晶系太陽電池が本格的に日本市場に投入されると思われます。
国内のシリコン結晶系太陽電池メーカーは、上工程の高純度シリコン原料やインゴットの国内生産量が少なく、輸入に頼っているために、価格競争力が乏しいのが現状です。
今後、国内のシリコン結晶系太陽電池の価格競争力を上げるためには、上工程の技術革新が必須と考えられており、NSソーラーマテリアル(新日鐵の子会社)やJFEスチールなどの鉄鋼メーカー系の高純度シリコン原料メーカーが、冶金技術を応用した安価な太陽電池用高純度シリコン原料(Upgraded Metallurgical Grade Silicon; UMG-Si)の開発を進めています。
また海外の太陽電池メーカーがシリコン結晶系太陽電池の高効率化と低コスト化に注力しているのに対し、国内の太陽電池メーカーは国主導のプロジェクトによりコスト面で有利な薄膜系太陽電池の技術開発に注力してきました。
例えば、CIGS(CuInGaSe)薄膜太陽電池を手がけるソーラーフロンティア(昭和シェルの子会社)は、弱点である変換効率を汎用の多結晶シリコン太陽電池に迫る13~14%にまで向上させ、製造能力を年間1GWにまで増強して国内最大手の太陽電池メーカーであるシャープに匹敵する規模になりました。
中国等の海外メーカーが、低価格シリコン結晶系太陽電池で日本市場に本格参入するのに対して、国内の太陽電池メーカーは、シリコン結晶系太陽電池の低コスト化と薄膜系太陽電池の高効率化で、海外メーカーを迎え撃つことになりそうです。
今後の日本における太陽電池市場の動向に世界が注目しています。