今日味新深(No.76:2013/10/22)
昨年度、弊社では公的機関から廃棄物リサイクルビジネスに参入している中小企業へのアンケート/ヒアリングを主体とした調査を受託しました。この調査を通して法規制がビジネスに与える影響に関して知り得たこと、感じたことをご紹介します。
日本では廃棄物処理法や資源有効利用促進法のもと、2000年以降に各種のリサイクル法が矢継ぎ早に施行され、それに呼応するように同分野に参入する企業数が急増したことが統計データに如実に表れています。
例えば、廃棄物処理業の事業所数は、1999年の12,457から2009年には23,405と倍増しています。これに加えて処理事業に必要な機器・装置のサプライヤーも既存技術を応用して、廃棄物処理用の製品を市場に送り出し、廃棄物処理市場を形成してきました。
しかし、廃棄物の発生量はその間、横ばいから減少傾向に入っており、参入したものの処理対象物が集まらず業績を悪化させる企業が相次いでいます。既に廃棄物リサイクルの国内市場は、参入企業数の推移と業績から、成長期を過ぎ、乱立・淘汰の時代に入ったと判断されます。
その中の勝ち組には、敏感に施策動向に反応し一歩先んじて参入し、競合がまだ少ない時期に処理量を獲得するための収集網を早期に確立した企業や、遅ればせながら参入しても、ニッチなところに焦点を絞って廃棄物を付加価値の高い再生品に変換できる独自の技術を開発した企業があります。独自の技術とは例えば、コーヒー粕、ジュースの絞り粕、酒粕などの特定の食品工場残さから、食品添加材・栄養補助剤を製造する技術、あるいは廃棄されたPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)を分解して石油代替燃料を製造する技術などです。
このように国内では各種のリサイクル法の施行が、ひとつの大きなビジネスチャンスを生み出してきました。今後、ますます人口増加に伴って廃棄物量が急増しつつあるアジア諸国でも、日本に倣った法体系の整備の進展がビジネスチャンスを生んで行くものと推測されます。
一方、規制緩和も多くの新規ビジネスを生み出して来ました。電力自由化はその代表例でしょう。また、補助金制度・優遇制度によって市場が大きく変貌することもよくあります。環境にやさしい新技術でありながら、コスト面から市場原理だけでは売れない技術、これに公的支援が付くことによって需要が喚起され、また、それに伴う量産効果でコストダウンが可能となり、より市場が開けて行くという流れです。典型的な例として太陽光発電を挙げることができます。
このように規制強化・規制緩和、さらには各種の補助金制度・優遇制度が、新たなビジネスチャンスを生み、既存のビジネスの栄枯盛衰に大きく影響することは言うまでもありません。
弊社は従来から、様々な法規制の動向調査を行い、ビジネスチャンスについての知見を蓄積してきました。今後は製造業の新たなビジネス展開のキーとなる可能性のある環境・エネルギー分野の法規制・制度にも焦点をあて、自主的、恒常的に最新情報をフォロー・蓄積し業界への影響分析を行うつもりです。