今日味新深(No.70:2013/5/27)
製造業においては、中国をはじめとする新興国の工業化により、また製品まで規格化が進み、日本が得意としてきた大量生産の主体は新興国にシフトしています。特にリーマンショック以降は先進諸国の低経済成長も相まって、製造側は価格競争で安く製品を提供せざるを得なくなっています。
このような状況を打破するためには、差別化戦略として従来から行われてきた製品自体の多機能化などがありますが、顧客ニーズにアピールできるか否かのリスクがあることや、製品開発に成功しても短期間での類似製品の出現により、差別化製品の寿命は短くなっています。
このような背景もあり、顧客への製品売買(通常サービスとして顧客の要望に応じて受動的にオプション品の無償提供や無料点検を行うものを含む)の従来ビジネスモデルから、製品のライフサイクル期間における顧客ニーズに対して製品とサービスとの組み合わせによりソリューションを提供することで差別化を図るビジネスモデルが出現しています。
製造業におけるソリューション事業は、製品自体の価値に加えて修理、保守の充実を図るなど、製品ライフサイクル全体の付加価値向上、さらに製品納入後もその機能を最大限に発揮すべく製品の活用方策のコンサル、製品を利用したビジネス展開のアドバイスによる付加価値向上などを実現します。
さらには任天堂におけるゲーム機器向けソフトウェア事業のような製品との相乗効果のあるサービスを提供する事業の取り込みなど、様々な形態が考えられています。
ここでは修理、保守の充実化に関係する事例を紹介いたします。
- <KOMTRAX(コマツ)>
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建設機械の情報(稼働状況、燃料消費量、作業負荷など)を通信技術の活用により遠隔で確認するシステムで、顧客の車両管理業務(保守管理、車両管理、稼働管理、車両位置確認、省エネ運転支援、帳票作成)をサポートするものです。一方、代理店にとっては保守契約の拡大や故障時の迅速な対応に、またメーカーにとってもリアルタイムの稼働状況把握によるきめ細かなマーケティング活動や迅速な生産量調整に活用できます。
- <リトレッド事業(ブリヂストン)>
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リトレッドタイヤとは、1次寿命が終了したタイヤのトレッドゴム(路面と接する部分のゴム)の表面を決められた寸法に削り、その上に新しいゴムを張り付け、加硫しトレッドパタンを形成する再生タイヤです。顧客にとっては経費の削減となる他、環境への貢献意識の向上へとつながります。加えて、メーカーにとっては、耐久性の高さがブランドとなることで他社との差別化がなされ、新品の拡販にもつながります。
その他の事例としては、パナソニックの照明機器機能をサービスする「あかり安心サービス」事業、GEの航空機用エンジンの分野における保守サービス事業などがあります。
弊社には、「新製品を検討しているが利益を出す絵を描くのが難しい」とのご相談が寄せられています。 このような場合には、ハードウェアのみならずサービスを含めたソリューションビジネスモデルを検討することも一つの方法と思われます。
弊社は技術動向、海外動向調査等のみならず、このようなハード/ソフト(サービス)を融合させたビジネスモデルの動きについても情報を蓄積しておりますのでお気軽に問い合わせ下さい。