今日味新深(No.53:2012/7/31)
今回は燃料電池自動車について報告します。
燃料電池自動車は、水素と酸素の化学反応により発生する電気でモーターを駆動させる自動車で、燃料に水素を用いる場合、水しか排出されません。また高いエネルギー効率が期待できることから、「究極の低公害車」、「次世代低公害車の本命」などとも言われています。
2012年3月に開催された第8回水素・燃料電池展(太陽電池展、二次電池展等と同時開催)では、数年前に比べて明らかに出展企業数、展示面積は減少傾向にあったものの、経済産業省や日産などの講師による基調講演とレセプションパーティーは例年にないほどの盛り上がりを見せていました。
振り返れば、1995年にカナダBallard Power Systems社が燃料電池を搭載したバスを試作したのをきっかけに、自動車メーカー各社の燃料電池自動車(FCV)の開発が活発化しました。
そして2002年12月、トヨタとホンダがそれぞれ発売したFCVのリース販売第1号をきっかけに、一気にブームを迎えるかに見えましたが、FCVの技術的ハードルが予想以上に高く、メーカーが思っていた以上にコスト低減が進まない中、電気自動車(EV)の上市とともに、FCVはトーンダウンして行きました。
それでも自動車各社はコツコツと技術開発を続け、航続距離、車両効率、低温での起動、水素充填時間、耐久性、車両価格など、実用化に向けて着々と課題を解決してきました。
残された大きな課題は、水素供給インフラの整備および量産化によるさらなる車両価格の低廉化です。
しかしこれらについても、2011年1月にトヨタ、日産、ホンダの自動車大手と石油企業やガス企業などの水素供給事業者が、「2015年に国内の4大都市圏を中心にFCVの販売を開始する。それまでに水素ステーション約100カ所を整備する。」との共同声明を公表、さらにこの声明とほぼ同時期にトヨタが既に製造コストを約800万円未満に引き下げることに成功しており、2015年には400万円程度で販売する可能性があるとの見通しを示したことで、FCVブーム再燃かと言われています。
この共同声明の実現がFCVブームの到来を占う上で重要な試金石となるはずです。まずは2012年度中の水素ステーション建設に絡む法規制の緩和の進捗状況、それを受けての水素供給事業者の建設動向、各FCVメーカーの量産化に向けた設備投資動向に、注目が集まることと思われます。