今日味新深(No.58:2012/10/17)
今回は自動車における車体軽量化の技術動向を紹介いたします。
自動車の車体軽量化技術の一つに、部品・部材への新素材(金属代替樹脂、CFRPなど)の活用が挙げられます。自動車部品に対して樹脂の使用比率を増加させることにより、軽量化、デザインの自由度向上、加工性やモジュール化などの容易さによるコウトダウン等のメリットが得られます。
自動車部品の樹脂化の例として、燃料タンク、オイルパン、ボンネット、窓ガラスなどが開発されています。また、ガラス繊維強化樹脂の適用例としては、ラゲッジボックスやステーションワゴンのバックドアなど、CFRPの適用例としては、シャーシー、モノロック、ナックル一体型ストラットなどが挙げられます。なかでもCFRPは高強度かつ軽量という特徴を持っていますが、高コストが課題であり、実用化のためにはより一層の低コスト化が必須といえます。
また、溶接及び成型技術の改良、部品構造の最適化による車体軽量化の取り組みも行われています。「FSW工法によるドアパネル」、「インサート成形による樹脂/鋼複合バンパー」、「新世代ボディー技術」などがこれらの一例に挙げられます。このうち、樹脂/鋼複合バンパーは熱間プレス加工を施した厚さ1.0 mmの亜鉛めっき鋼鈑(引張強度:1500 MPa)をインサート材にしてその回りにガラス繊維強化(50%充塡)ポリプロピレンをモールド成型したものであり、鋼にはボディーの補強機能を持たせ、樹脂には衝突時の衝撃吸収機能を持たせています。これら技術により、通常7 kg程度あるこのバンパーの重量を3 kg以下に低減しています。
さらに、新世代ボディー技術も開発されています。この技術は構造・工法・材料の3つの観点からボディー設計を改良し、高剛性と軽量化を追求したものです。構造の観点では、プラットフォームをできるだけストレート化し、曲げ部分を横方向のフレームと接合させた環状構造とすることで、ねじれ剛性と曲げ剛性を向上させています。工法の観点では、プラットフォームを接着剤併用のスポット溶接で作製するとともにスポット溶接点数も増加させ部材の結合部を強化することで,ロードノイズ低減と剛性向上を図っています。材料の観点では、ハイテン鋼板(特に590 MPa級)の適用率を40 %から60 %に拡大させ、さらにホットスタンプをBピラー補強材に適用することで従来必要とされる内側の補強材を廃止しています。これらの技術により、従来比で約8 %の軽量化を実現しています。
自動車技術には様々な要素技術が集結しており、それらの技術は日々進歩しています。そのため、当社ではこの車体軽量化に加えて、パワートレイン、電動自動車などの技術に対して、定点観測を行い、最新情報の収集と発信に努めています。