今日味新深(No.56:2012/9/21)
世界知的所有権機関(WIPO)が「世界知的財産権指標2011年版」を発表しています。今回はこのレポートの内容についてご紹介いたします。
2010年は世界的経済の低迷の長期化に加え、ヨーロッパにおける債務危機の脅威があったにもかかわらず、2009年は3.6%のマイナスであった世界の特許出願件数が、世界のGDP成長率5.1%を上回る7.2%のプラスに転じ、過去最高の出願件数(198万件)に達しました。
国別の特許出願状況では、中国特許庁への出願が391,177件(前年比24.3%増)まで増加し、日本の出願件数344,598件を上回り、米国の490,226件(前年比7.5%増)に次ぐ規模まで拡大しています。出願国別に世界での出願件数増加への寄与度を見ると、中国の寄与度が最も高く、中国と米国を合わせると出願件数増のうちの4/5を占め、出願件数の増加に大きく寄与する構図となっています。一方日本では、2009年に10.8%減少した出願件数が2010年には1.1%の減少となり、出願件数の低下傾向に歯止めがかかりました。
歴史的に見ると、特許出願件数が大きく増加した時期は過去に2度あり、1度目は1983年~1990年(年率平均3.7%増加)、2度目は1995年~2008年(年率平均4.9%増加)です。2009年はリーマンショックの影響から一時的に出願件数の伸びが低下したと考えると、1995年以降の出願件数の増加傾向が現在も継続していると言えます。
出願件数が増加した要因を分析すると、1983年~1990年の期間は優先権を主張した出願(29.2%)よりも新規な発明の出願(70.8%)が多く、国別で見ると日本出願の増加が全体の増加件数の57.3%と過半を占めていました。一方、1995年~2008年は新規な発明の出願(49.7%)よりも優先権主張した出願(50.3%)が増加したことが総出願件数の伸びにつながっています。すなわち、経済がグローバル化するに従い、一つの発明を多国に出願して権利保護を図ることが重要になってきていることを表していると思われます。
また1995年~2008年において、世界での出願件数増加に対する中国への出願件数増加の寄与が最も高く(35.6%)、次いで米国(22.1%)、韓国(17.8%)の順であり、2010年のデータも含めて、グローバル化の流れの中でも特に中国が継続して重要視されていることがわかります。
今後多くの日本企業において海外展開がますます重要になっていくと思われます。当社でも調査ニーズに対応し、今後も海外特許の調査・解析体制をより強化していきます。