今日味新深(No.74:2013/8/21)
近年、自動車や電気電子機器の部品等に使用されている、レアメタル(レアアースも含む)を巡る動向が、メディアなどで多く取り上げられています。一方、銅、亜鉛、鉛といったベースメタルと呼ばれる金属についても、鉱石品位の低下や資源保有国の鉱石輸出規制などの影響を受けて、今後の安定確保が懸念されています。
弊社では、銅、亜鉛、アルミの3鉱種を巡る業界動向の分析や将来予測の調査を行いました。ここでは、その中から亜鉛についてご紹介致します。
亜鉛の主な用途は、亜鉛めっき鋼板に代表される防蝕めっき材料や黄銅の素材、あるいはダイカスト用材料であり、その他無機薬品などにも用いられています。亜鉛含有の鉱物には、閃亜鉛鉱(ZnS)、菱亜鉛鉱(ZnCO3)などがあり、現在では閃亜鉛鉱が製錬の対象として用いられています。なお、亜鉛製錬では副産物として液晶などに用いられるインジウムも生産されます。2011年の世界の鉱石生産量は1,276万tであり、中国が世界最大の産出国で、豪州、ペルー、インドなどが続きます。日本では鉱石の産出がないため、原料となる鉱石を、豪州、ペルー、ボリビア、米国などから輸入しています。
2011年の世界全体の亜鉛地金生産量は1,308万t(鉱石外からの生産分も含む)、消費量は1,278万tで、いずれもアジアが世界全体の約6割を占めています。地金の生産、消費ともに、これまで中国での生産の伸びに牽引される形で増加してきました。
今回の調査に基づく将来予測では、2015年の地金生産量は2011年比11%増、消費量は同比12%増となり、2020年の地金生産量は同比37%増、消費量は同比38%増となっています。今後も消費が継続的に伸びていく事が見込まれていますが、自国での消費が多い国では、資源確保の動きを強めています。
特に、中国は他国に比べて需要が大きく、原料鉱石が多量に必要になるため、国内の鉱山開発に加え、海外資源の確保を活発に進めています。2009年には、中国五鉱集団(Minmetals)が豪州のOZ Mineralsを買収するなど、豪州やカナダの大規模な亜鉛鉱山を取得しています。
しかし、特定の国や特定の企業による鉱山権益や鉱石生産の寡占化が進むと、市場メカニズムが働き難くなり、原料鉱石の供給障害が生じる恐れや消費に見合った地金の生産がスムースに行われないこと、国際価格の上昇要因の一つになることなど、新たなリスクが生じてくると思われます。国際価格の大幅な上昇は、我が国企業にとっても亜鉛めっき鋼板等の生産コストに影響を与え、またその結果鋼板のユーザ企業にもコストアップ要因となります。
レアメタルに限らず、ベースメタルに関しても資源を巡る他国の動向は注視が必要です。
弊社では、亜鉛のみならず、銅、アルミ、レアメタル等の資源を巡る動向や、資源のリサイクル動向などについて、今後も情報の収集・提供を行って参ります。