今日味新深(No.57:2012/9/26)
2011年の福島原発事故以後、日本のエネルギー基本計画の見直しが行われてきたが、「2030年代に原子力発電の稼働をゼロ」とする方針は、閣議決定に至らなかった。従来、電力供給のベースロードとなっていた原子力の位置づけが定まらないなかで、縮減方向にある原子力による発電量を、再生可能エネルギーや化石燃料によりどこまで代替可能か?は、重要な課題である。
太陽光や風力発電などと異なり、天候に関係なく、一日中ほぼ一定した出力で発電可能な地熱発電は、ベース電源として魅力的である。今回は、世界的な地熱発電の現状と今後の動向について俯瞰する。
現在の地熱発電は、火山活動による地熱によって生成された水蒸気を坑井から地上に取り出し、蒸気タービンを回して発電する方式が主流である。
2010年4月現在、世界における地熱発電設備容量は、10.7GW(100万kW、原子力発電所の10基分相当)であり、主に太平洋の周囲を取り巻く環太平洋火山地帯の国々に分布している。設備容量が大きい上位6カ国は、米国(3.1GW)、フィリピン(1.9 GW)、インドネシア(1.2 GW)、メキシコ(1.0 GW)、イタリア(0.8 GW)、ニュージーランド(0.6 GW)であり、米国とフィリピンで世界の地熱発電設備容量の約50%を占める。
ちなみに、日本は、地熱資源量では、インドネシアに次ぐ世界3位であるが、地熱発電設備容量では、電力事業者および民間を含めても18発電所、0.54GWとアイスランド0.58GWに次ぐ、世界8位に位置する。これは、日本において多くの地熱資源が国立公園内にあるため、自然公園法などの規制があり、発電所立地が困難であったことが影響している。
これまで日本の地熱発電プラント企業各社は、国内立地が困難なため、海外案件で数多くの建設実績とメンテナンス経験を積み重ねてきた。また、地熱流体に起因するタービンや配管の腐食やエロ-ジョンという技術課題にも果敢に挑戦し、プラントの信頼性も大いに向上してきている。今や地熱発電用蒸気タービンでの世界シェアは、三菱重工、東芝、富士電機の3社で70%を超えるに至っている。
グローバルな地熱発電マーケットは、国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、発電設備容量は、2020年(22GW)、2030年(46GW)、2050年(200GW)、2050年の年間地熱発電電力量は、1,400TWh(世界の発電電力量の3.5%に相当)に達する。この予測には、現在、ドイツやオーストラリアで開発が進められている高温岩体方式1)発電が2030年以降すぐに商業化されるということが織り込まれている。火山帯地域以外における地熱利用技術開発が、グローバルマーケットを拡大させると期待されている。
日本では、地熱発電に関して、ようやく2011年3月の規制緩和や2012年7月からの「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度」などの公的な支援制度も始まった。今後、地熱発電は、大きな成長分野と期待される。
1)200~300℃の岩体に水圧粉砕技術を使って、人工貯留層をつくり、地上から水を送り込んで熱水や蒸気を得る発電方式