今日味新深(No2:2010/1/7)
化審法「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の一部が改正され,この5月20日に公布されました。
従来の化審法では,新規化学物質について安全性に対する厳しい事前審査を実施してきましたが,既存の化学物質のすべてを網羅しての安全性評価は行われておらず,近年の欧州の動き(REACH規則)との整合が採れていない状態にありました。そこで,今回の改正では,既存化学物質を含むすべての化学物質について,1トン以上の製造・輸入を行った事業者には,毎年その物質の数量の届出義務が課せられました。また,必要に応じて製造・輸入業者に有害性情報の提出を求め,取扱事業者に使用用途の報告を求めるとしています。
日本の化審法見直しに影響を与えたのが欧州REACH規則です。欧州REACH規則では,まず第一に既存の化学物質(金属も含む)も対象として,原料物質として製造する或いは,欧州域内に持ち込んでいる事業者は,安全性データを添えた登録が要求されます。現在,関係事業者は今後の登録作業に向けて安全性データを取得する必要があり,欧州域内で安全性データを共有するコンソーシアム活動への対応を余儀なくされています。しかし,この活動は欧州企業が主導しているため,日本企業はその対応に大変苦労をさせられている状況です。
またREACH規則では,最終製品を作っている製造者には,物質の登録義務はないのですが,SVHC(高懸念物質)と言われる安全性が懸念される化学物質が最終製品に含まれる場合は,使用の届出義務や消費者団体などからの問合せについて対応しなければならない義務があります。このSVHCは既に候補として発表されていた15物質が、昨年12月に正式決定されました。今後順次追加され最終的には1,000物質程度になると言われています。将来、物質規定の内容によっては幅広い製品に影響が拡大する恐れがあります。この欧州REACHの動きに関して,企業担当者から聞こえてくることは,欧州での動きが多分に政治的であり,日本サイドから欧州の動きが見え難いことです。
最も重要と思われる安全性データを共有するコンソーシアム活動についても同様に見え難く,SVHCに関してもどのような物質がどのタイミングで規制されるのか読みにくい状態です。
REACH関連の動向は、日本の化学物質管理の規制への影響が大きく,また中国などその他諸国もその影響を受けることは確実です。今後とも,グローバルな事業展開をする上で化学物質規制に関する動向の把握が欠かせないものと考えています。